2025 年 5月 17日(土)
13:00-13:50 研究発表 13:50-14:20 質疑
近代の商家における書画コレクションの形成と活用―近江日野の事例より―
多田羅多起子(広島大学)
14:30-16:40 デザイン史研究と教育3(工芸編)
現在の日本では、工芸分野への関心が高まっているものの、工芸の後継者だけでなく、工芸の研究者(理解者)の減少もあやぶまれています。そこで、今回はシリーズ3回目として、将来のデザイナーが知っておきたい工芸の知識や、若い世代への工芸の歴史の伝えかたや、工芸研究の魅力について意見交換をしたいと思います。
今後、意匠学会の例会では、研究発表のほか、共通のテーマについて打ち解けた議論の場をもうけたいと思っています。今後の意匠学会の取り組みとして、デザイン史や、建築史・工芸史・服飾史などを含む、広い意味での「デザイン研究」の入門書をつくることを計画しています。会員の皆様、ふるってご参加ください。
14:30-14:40 主旨説明
14:40-15:00 工芸:前崎信也(京都女子大学)
15:00-15:20 漆芸:下出茉莉(大手前大学)
15:20-15:40 染織:上田香(神戸大学)
15:50 コメント:宮川智美(京都国立近代美術館)
16:00-16:30 ディスカッション
16:30-16:40 『デザイン研究入門』の企画について
近畿大学東大阪キャンパス33号館403教室https://www.kindai.ac.jp/access/#station
〒577-8502 大阪府東大阪市小若江3-4-1
主要交通機関からのアクセス
1)近鉄大阪線「長瀬」駅下車 徒歩約10分。
2)近鉄奈良線「八戸ノ里」駅下車 徒歩約20分、直行バス約6分。
3)JRおおさか東線「JR俊徳道」駅・近鉄大阪線「俊徳道」駅下車 直行バス約15分。
当日午前10時30分より役員会を開催いたします。近畿大学・東大阪キャンパス33号館4階403教室までご参集ください。
滋賀県蒲生郡日野町は、江戸時代から明治時代にかけて近江日野商人を輩出した豊かな町として知られる。本発表では、日野の某家に伝世する所蔵品目録をもとに、近代の商家における書画コレクションがいかに形成されたか、そして、暮らしのなかでどのように活用されていたかを探る。今回紹介する「某家蔵書画現在品図鑑」(以下、「書画図鑑」)は、その名の通り精緻な図と、詳細な情報を伴う目録である。書であれば字句、画であれば略図が表具と共に描き込まれ、作品によっては、発注時の状況や設える季節なども書き添えられる。書画本体に係る情報と共に、表具の詳細や調度としての使用実態がわかる資料であり、幕末期から昭和戦前期にかけての書画受容の実相をつまびらかにしてくれる。
近江日野の商人と画人のかかわりについては、すでに國賀由美子氏らの研究に詳しい。『近江日野の歴史 第五巻 文化財編』(日野町史編纂委員会、2007年)では、近世中期から近代にいたる画人たちと日野の親密な関係が報告されている。今回紹介する資料は、先行研究の成果に肉付けをし、画人たちの仕事がいかに暮らしを彩っていたのかを知る貴重なものであり、一事例の紹介に留まらない価値がある。
また、書画コレクションの形成については、大名家の所蔵目録や売立目録、美術館、博物館に一括寄贈された商家のコレクションなどについての先行研究があり、隣接領域においては、儒家や商家などの蔵書コレクションに関する研究の蓄積もある。そのなかでも、今回紹介する資料のように、詳細かつ具体的な記録をもつ例は稀であると言える。
本発表では、まず、「書画図鑑」の概要を紹介し、記録者の観点を明確にする。続いて、所蔵された書画をリスト化、分類、分析し、コレクションの特徴を明らかにする。その上で、いかに書画コレクションが形成され、どのように活用されていたのか、暮らしのデザインに書画が果たしていた役割を実態に即して明らかにしていきたい。多田羅多起子(広島大学)