第236回 意匠学会研究例会 発表要旨

■ 19世紀アメリカのリフォームドレス運動について
─新聞『シビル』の記事から─

谷 紀子/京都女子大学大学院家政学研究科生活環境学専攻 博士後期課程

  西洋では、19世紀の女性の服飾は、ウエストを細くコルセットで整えて、広がった長いスカートを広げたスタイルが主流であった。しかし、アメリカ合衆国で、女性のリフォームドレス運動がおこり、短いスカート丈のチュニックドレスとゆったりした「パンツ」と呼ばれるズボンをはいたスタイルが提案された。アメリア・J・ブルーマー(Amelia. J. Bloomer)(1818年-94年)の名前から「ブルーマー」(the bloomer)と呼ばれるこのスタイルはブームとなり大流行し、欧米の女性のファッションに影響を与えるが、その後定着することはなかった。
 このリフォームドレス運動については、これまでの研究に関して、その多くはブルーマーに注目されているものがほとんどであるが、アメリカには彼女だけではなく他にも幾人かの活動家たちがいたことはあまり語られてこなかった。
 本発表では、その活動家の一人であり、実際にブルーマー・スタイルである「リフォームドレス」を日常着にしていたリディア・セイヤー・ハスブルック(Lydia Sayer Hasbrouck)(1827年-1910年)に注目する。彼女はニューヨーク州で医学を勉強した後で、記者となり、リフォームドレス運動に関わった。そして日本ではほとんど知られていなかった新聞『シビル』(“The Sibyl”)(1856年-64年)を創刊した。新聞の内容はリフォームドレス運動と女性の権利運動の推進のための記事が中心であり、女性たちにこのスタイルの服装を勧めており、読者からの手紙や質問に関しての回答等の様々な記載がある。
 リディアの積極的な活動の軌跡とこの新聞『シビル』の記事を読んで、リフォームドレス運動という社会運動の詳細と、このスタイルを取り入れた様々な団体や人々の反応の諸相の分析を試みる。